この「地下鉄はどこを走っているか」シリーズを書くにあたって、メトロアーカイブに収録されている各路線の建設史を参照してきました。しかし「銀座線はどこを走っているか」シリーズに限っては、国立国会図書館デジタルコレクション「東京地下鉄道史 乾・坤」を参照しています。なぜかというとメトロアーカイブに「銀座線建設史」というものが存在しないからです。
ではなぜ「銀座線建設史」なるものが存在しないかというと、銀座線は帝都高速度交通営団が建設したわけではないからです。すなわち、浅草駅から新橋駅を東京地下鉄道が、新橋駅から渋谷駅を東京高速鉄道がそれぞれ建設し、その後1941年(昭和16年)に帝都高速度交通営団に譲渡されているのです。
今まで日本橋付近、新橋付近、上野車庫線と書いてきましたが、これらはいずれも東京地下鉄道が建設した区間で、「東京地下鉄道史 乾・坤」にその詳細が記されています。それに対して今回の赤坂見附交差点付近は東京高速鉄道が建設した区間ですが、ごく簡単な建設史しかありません。参考になりそうなのは参考資料1のP.32~33に掲載されている「東京高速鐡道建設工事概要」程度です。ただしあまり鮮明ではないので、同じ赤坂見附駅を共用している丸ノ内線建設史をメトロアーカイブで参照してみましたが、赤坂見附駅の拡張工事に関しては記載があるものの、銀座線の経路に関する記述はほとんどありません。さてどうしようか…ということで、青山通りの下を並走している半蔵門線の建設史を調べたところ、ようやく参考になりそうな図が見つかりました。
今回主として参考にしたのは、「半蔵門線建設史」P.370図4の永田町駅、P.400先の平面図及び縦断面図です。
東京メトロ赤坂見附駅の駅ビルです。もともとはファッション関係の店舗が入っていましたが、のちに中身が入れ替わりました。ビックカメラ赤坂見附駅店という方がわかりやすいかもしれません。写真右手前に換気口が見えますが、このあたりから銀座線はベルビー赤坂の下に向かってもぐり込んでいきます。
赤坂見附駅の西側出口です。銀座線は右奥から左手前に向かって走っています。この写真の範囲においては、銀座線はまだベルビー赤坂の下です。
写真2より20mほど北側で撮影しました。私は銀座線の真上に立っています。銀座線は手前から左奥に向かって走っています。左前方には、次の写真4に示す赤坂扇やビルが見えます。
ちょっと不思議な感じの赤坂扇やビルです。このビルは、東側が写真4のごとく3階床分抜けた構造になっていますが、Googleマップ航空写真によると西側は通常の構造で9階床ほどあります。銀座線は左手前から右奥に向かって走っていますので、この変わった構造は銀座線トンネルへの荷重を減らすためと推定されます。
写真3~4の1本西側の通りです。写真5の左に小さな駐車場があってクルマが停まっていますが、銀座線はこの下を奥から右手前に走っています。Googleマップ航空写真によると、写真中央の茶色いビルの左奥に空地が存在しています。詳細はよくわかりませんが、銀座線の換気口なのかもしれません。
写真5に写っている茶色いビルの前から道路の反対側を撮影した状態が写真6です。この写真の奥に見える茶色の非常階段は赤坂ロングビーチビルのもので、この真下を銀座線が右手前から左奥へ向かって走っています。
最初、この空間(駐車場)が銀座線トンネルの真上かと思ったのですが、そうではありません。銀座線は、右に見える茶色の非常階段の下を走っています。
こちらが赤坂ロングビーチビルの正面側で、1階にはスターバックスコーヒーが入っています。ここは銀座線トンネルの真上になります。一休みして、目の前の換気口から聞こえてくる銀座線の音を楽しみました。急曲線通過時のフランジきしみ音がよく聞こえます。
スターバックスコーヒーの脇にコンクリートの塊があります。ここはまさに銀座線トンネルが青山通りの下にもぐり込んでいるところですが、このコンクリートの塊が銀座線と関係あるかどうかまではわかりませんでした。
赤坂ロングビーチビルは、写真10の赤↓印を付したビルです。このビルの真下を銀座線が走っているとは…知らないとわかりませんね。
今回短い区間ではありましたが、位置特定に意外と手間取りました。また、地下鉄の真上によくこれだけの建物を建てたものだと思いました。10階床近い建物であれば地下鉄トンネルを避けた形で基礎を設ける必要があるはずで、具体的にどのような構造になっているのか興味がわきます。
参考資料
1.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)
2.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道半蔵門線建設史(渋谷~水天宮前)」帝都高速度交通営団(平成11年)
3.人文社編「昭和三十年代東京散歩」人文社(2004年)