キワ90に関する本を発行しました

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写真1 表紙

 キワ90とは国鉄が試作した貨物ディーゼル動車です。2軸のかわいらしい車両なので、今でも鉄道模型界では人気があるようです。私自身はキワ90を見たことはないのですが、改造後の姿であるヤ390を撮影しに行っています。そこで時間をさかのぼってヤ390からキワ90を探る…という内容にしてみました。

 国鉄の場合、新たな形式を起こした場合は説明書・付図を作成するものですが、試作車の場合は必ずしもそうとは限らず、キワ90に関する説明書・付図はないようです。そのため、なかなか大変でした。

 

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写真2 はじめに

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写真3 目次

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写真4 諸元に関するページ

 

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写真5 ちらりと写真を

 屋根上送風機を駆動するための軸が車体のど真ん中を貫通しています。もちろん保護管の中だとは思いますが、なかなか奇抜です。では、それをどのようにして回しているのでしょうか?

 静油圧駆動→だったら軸を貫通させる必要なし
 傘歯車→ディーゼル機関吊り枠後部に入るか?

 現車を見た時にこのことを疑問に思っていればそれ相応の写真を撮影したと思うのですが、当時はそんなところまで考えが及びませんでした…。今さらどうやって確認すればよいのやら…。

 

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写真6 排気管経路に関して

 今回本を書くに際して各時代の写真を眺めているうちに、排気管経路がいろいろ変化していることに気づきました。狭い床下に無理やり詰め込んだために問題があったようです。キワ90時代(前後両方に運転台があった時代)の状況を見たかったと思います。

 

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写真7 逆転機

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写真8 逆転機の減速比

 逆転機に関しても、現車を見た時は疑問に思っていませんでした。しかし、写真と形式図を見ているうちに、標準とはかなり異なっていることに気づきました。いろいろな資料をひっくり返し、ガソリン動車キハニ5000形からその後の標準的なディーゼル動車まで、逆転機の歯車の歯数を調べてエクセル一覧表にしました。

 歯数が1枚でも違えば減速比の数字は一致しません。まさにパズルです。数字がぴたりと一致する設計条件をあれこれ推測してみると…なかなかおもしろいことが見えてきました。

 

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写真9 ブレーキ装置に関して

 K制御弁は貨車に大量に使われていました。書泉グランデで売られている交友社の教本にもまだ掲載されています。一方、そのご先祖であるP制御弁に関しての本はもう市販されていません。しかし、国立国会図書館デジタルコレクションをあれこれ探していたら、なんとそのものずばりの書物が出てきたのです。P制御弁だけでなく、GPSブレーキ装置の全貌も判明しました。こんなにうれしいことはありません。ひとりで「あはは…見つけた!」と声を上げてしまいましたが、傍から見ると不気味だったことでしょう。

 

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写真10 ブレーキ弁など

 今回書いた本には鹿島鉄道キハ712のP制御弁の写真を参考に掲載しました。K制御弁もP制御弁も外観がそっくりなのですが、実は補助空気溜の内部に隠れる部位に特徴的な差異があるのです。鹿島鉄道キハ712の場合は補助空気溜の外に制御弁を独立して取り付けているため、P制御弁であることがはっきりわかるのです…が、キワ90の話から脱線するので、詳しいことは記しませんでした。別途、ブレーキ装置を主題とした本を書いた方が良さそうです。

 
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 以上のような感じで、本にまとめていくうちに不明点が浮き彫りになってきました。当事者ではない趣味人が不明点を明らかにするのはなかなかむずかしいな…と思った次第です。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…