【都市伝説好きの方へ】地図に無い地下鉄…

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1.はじめに

 実は「清澄白河駅から東西線木場駅のすぐ近くまで行く地下鉄路線」が存在します。しかし、ほとんどの地図には記されていません。今回はその路線の正体に迫ります。

2.都営地下鉄大江戸線の入出庫線

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写真1 空中写真に追記した入出庫線

 都営地下鉄大江戸線清澄白河駅があります。この駅から南方に向かうと、途中で本線(営業線)から入出庫線(非営業線)が分岐します。写真1に示した黄色い線がこの入出庫線で、木場車庫まで通じています。

 ところでこの入出庫線ですが、ネット地図には記載されていません。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」でも当該地域を広く表示すると見つかりませんが、めいっぱい拡大すると記載されていることがわかります。非営業線だから積極的に地図に記載しないということなのかもしれません。なお、市販されている書籍「大江戸線建設物語」には結構詳しく記されています。

 さて、大江戸線清澄白河駅とその南方は開削工法で建設されました。この区間は外側2線が本線、内側2線が入出庫線の4線区間となっています。清澄白河駅を出ると入出庫線は45‰で下り、本線の下をくぐって半径84mという急曲線で東の方に分岐していきます。本線と入出庫線が分岐する地点より先は「本線:単線シールドトンネル並列」「入出庫線:複線シールドトンネル(外径8.8m)」となっています。

3.現地の状況

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写真2 清澄白河駅

 写真2は清澄白河駅で、プラットホームはふたつあります。しかしよく見ると2番線と3番線は同一線路であり、線路は3本しかありません。実は、駅を出て南に進むと中央の線路が2本に分岐して入出庫線になるのです。写真1の「清澄白河駅南方の開削部」と記した区間がこの4線区間です。

 この入出庫線は約0.9kmと長いので、入出庫時の列車運行制約を無くすため複線にしたのはわかります。それならば清澄白河駅の2番線と3番線も別線路にすればよいのにと思いましたが、駅を道路幅の中に収めるために致し方なかったのでしょう。

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写真3 清澄白河駅南方の開削部

 写真3は清澄白河駅南方開削部の地上風景です。手前が駅で、奥(南)に向かって4線区間になっています。前述の通り外側2線が本線、内側2線が入出庫線で、このあたりの入出庫線は45‰という急勾配で下っています。

 左奥に建物②が見えますが、入出庫線はこの建物の基礎と干渉しないように走っています。

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写真4 入出庫線分岐部

 写真4は本線から入出庫線が分岐するところです。写真左端付近から入出庫線の複線シールドトンネルが始まっています。この交差点における入出庫線トンネル曲線半径はなんと84mです。このような急曲線であるにもかかわらず若干民有地に食い込んでおり、建物②は出庫線トンネルと干渉しないよう壁面が階段状になっています。

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写真5 入出庫線分岐部

 写真5は分岐部から清澄白河駅の方を振り返って見たところです。本線は奥から左手前に向かって走っていますが、分岐した入出庫線は私の足元を通って右手前に走ってきます。目の前に見えるふたつの横断歩道の地下には木場シールド立坑があります。ここからシールドマシンを木場車庫に向かって発進したのです。

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写真6 入出庫線分岐部

 写真6は入出庫線真上の道路から本線真上の道路を見たところです。建物②の右奥には木場シールド立坑があり、ここから木場車庫(手前)に向かってシールドマシンが発進されました。木場シールド立坑の上部はその後本線トンネルに改造され、写真左から本線のシールド木場シールド立坑に到達して本線トンネルが完成しました。

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写真7 平野交差点

 写真7は平野交差点です。入出庫線は私の足元から奥に向かって続いています。入出庫線の複線シールドトンネルはこの交差点で少し進路を変えます。その曲線半径は200mですが、トンネルは道路下に納まっており、民有地は通過していません。

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写真8 平野二丁目交差点

 写真8は平野二丁目交差点です。交差点左側に建っている建物③の基礎がトンネルと干渉しそうに思えます。しかし、半径84mという急曲線で通過したため、建物③の基礎とは干渉していません。回送列車に乗って半径84m曲線を通過してみたいものですが、それも実現困難な話です。

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写真9 平野二丁目交差点

 写真9は、写真8と反対側すなわち東側から交差点を見たところです。奥から私の足元に向かって入出庫線が走っています。しかし、こうして見る限り平凡な街風景で、道路の真下に複線トンネルがあるとは思えません。

 

4.まとめ

 都営地下鉄大江戸線には「清澄白河駅から東西線木場駅のすぐ近くまで行く」路線があります。木場車庫への入出庫路線です。今回はその前半区間清澄白河駅南方から平野二丁目交差点付近までの経路を紹介しました。45‰勾配があったり、84m急曲線があったり、なかなかおもしろそうな入出庫線です。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…

【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。