1.はじめに
グランドプリンスホテル高輪の北方に高輪公園があります。この公園にいるとどこからかゴーッという音が聞こえてくることがあるのですが…これはいったい何なのでしょうか?
2.高輪公園の下には巨大な空洞がある
地下鉄は道路の下を通ることが多いものですが、都営地下鉄浅草線の高輪台駅-泉岳寺駅間は民有地などの下を走っています。そして、この高輪公園の真下も走っているのです。浅草線建設に際してこの場所には竪坑が掘削されました。完成後はその空洞をトンネル内換気用に利用しており、公園の片隅には換気塔が設置されています。公園内で時々耳にするゴーッという音は、浅草線電車が高輪公園の真下を走り抜ける音なのです。
浅草線の西馬込駅-泉岳寺駅間が開業したのは1968年11月です。写真1はその2年前の状況ですが、高輪北町竪坑とその先(東側)の開削工法によるトンネル建設状況がはっきりとわかります。
高輪公園があった場所はもともと酒井邸だったそうで、1961年11月に東京都交通局の所有になっています。公園用地を「交通局」が買うとはどういうことかと不思議に感じるかもしれませんが、用地を買収して都営地下鉄浅草線の建設用地にしたわけです。
1968年11月の浅草線開業後、1970年10月に港区がこの場所を買収し、1972年7月に高輪公園として開園しています。
ちなみに、この竪坑があった場所を当時の地図で調べると芝下高輪町です。芝高輪北町という町名もありますが、この竪坑から150m程度離れています。高輪北町という都電の停留所があったので、なじみがあるその名称を用いたように思われます。
写真2は最近の状況です。No.64~67は通風口の番号を、①~⑤は建物の番号を示します。さらに、建設史および写真1から割り出した浅草線と京浜急行線の経路を重ねたものが写真3です。
3.現地の状況
公園専門ウェブサイトは結構多くあり、高輪公園も紹介されています。しかし、地下鉄の換気塔があることは記されていないようです。写真4は球技スペース脇の換気塔ですが、樹木の陰に隠れるように存在しています。「高輪換気口」「通風口No.64 東京都交通局」の表示板が取付けられており、この下が高輪北町竪坑です。
写真5は、換気塔(写真4)を背にして高輪公園内を見た状態です。別にどうということのない公園ですが、この下を半径170m左曲線で浅草線の電車が走り抜けています。その音が換気塔No.64から響いてくるわけです。深夜この公園で突然地底からの音を聞いたらびっくりするでしょうね。
高輪公園入口には少女と鳥の像があり、その向こうには建物①が見えます。そして、私の足元から写真奥に向かって浅草線が走っています。よく見ると建物①の下部が上部の壁面より引っ込んでいます。これは浅草線トンネルが建物①の敷地に若干食い込んでいるため、それを避けていると考えられます。
高輪公園入口(写真6)の近くには「通風口No.65 東京都交通局」があります(写真7)。私としては少女と鳥の像よりもこちらの方が気になりました。通風口の脇に立ってしばらく待っていると、地下からゴーッという電車通過音が響いてきました。そうです。この公園はトンネルの真上なのです!
建物①の脇を通り抜けた浅草線は、建物②の真下を突き抜けていきます。建物②は写真8のようにわずか2階床ですから、トンネルの真上でも問題はありません。
写真8の赤↓印の路面には東京都交通局の境界標(写真9)があります。ここから右側が浅草線トンネルの範囲となります。
写真10は、建物②の前から建物①の方を見たところです。私の目の前(写真10の黄↓印の路面)には東京都交通局の境界標(写真11)があります。奥の赤↓印(写真9)との間が浅草線トンネルの幅になっており、写真の左奥から右に向かって走っています。
4.まとめ
高輪公園の真下には浅草線トンネルがあります。この場所には地下鉄建設に際して竪坑が掘削されました。完成後はその空洞をトンネル内換気用に利用しており、公園の片隅には換気塔が設置されています。そのため、電車が通過すると音が響いて来ることがあります。
以上
ちかてつの
さかてつでした…
【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。