銀座線はどこを走っているか(その1) 日本橋付近

地図を見ると、銀座線は上野駅付近から新橋駅付近までずっと中央通りの真下を走っていることになっています。しかし、参考資料1(半蔵門線建設史)のP.516「図117 室町一工区平面図」、P.522「図123 室町二工区平面図」、参考資料2のP.28「日本橋河底隧道」を参照すると、日本橋を迂回して走っていることがわかります。

また参考資料3が国会図書館デジタルコレクションで公開されており、コマ番号52「第19圖 淺草新橋間線路平面及従斷面圖」(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1235045/52)には日本橋付近における経路がわかります。次コマには曲線半径一覧表も掲示されており、これによると、日本橋北詰交差点付近を半径150m右曲線で中央通りから西側に反れ、日本橋の西側(上流側)を半径150m左曲線で迂回しながら南下し、日本橋南詰で半径150m右曲線で中央通りに戻る…となっています。

その他、参考資料3コマ番号197「第190圖 日本橋川河底隧道施工圖」(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1235045/197)も参考になります。

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写真1 三越新館

三越の新館が写真1のようになったのは(増築されたのは)2004年ですが、それ以前ここには興亜火災ビルが建っていました。「興亜火災海上ビル/室町1丁目」で検索するとどのような建物だったか出てきます。

さて、三越新館(写真1)と興亜火災海上ビルの写真を見比べると、おもしろいことに気づきます。日本橋北詰交差点の角に面している正面口は、いずれの建物も2本の柱で支えられているのです。「三越新館が、興亜火災海上ビルのデザインの一部を引き継いでいる」ということなのかもしれませんが、それ以外にも重要な理由があるはずです。

実はこれらの建物の敷地には銀座線のトンネルが少し(1m程度)食い込んでおり、2本の柱は干渉しないような位置に建っているのです。半蔵門線建設史P.516図117室町一工区平面図、P.522図123室町二工区平面図を参照すると、その状況がよくわかります。写真1の右側が中央通りですが、銀座線はこのあたりで中央通りから半径150m右曲線で三越新館の敷地をかすめ、日本橋の上流側に向かっています。

 

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写真2 日本橋北詰

奥に三越新館が見えますが、銀座線は中央通りの下ではなく、まさに私の足元に向かって走っています。写真2の左側に見えるのは、三越前駅のB5出口です。

 

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写真3 日本橋北詰

奥に見えるのは日本橋です。頭上を高速道路が走っていて、日本橋川に蓋をしているような感じです。日本橋に向かって階段がありますが、写真2はこの上から反対側を向いて撮影したものです。写真3の右端には銀座線の換気口が写っています。

 

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写真4 銀座線換気口

写真3右端の換気口を別の角度から見た状態です。銀座線は右から左へ向かって走っています。

 

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写真5 日本橋北詰

この写真は、日本橋の上から撮影しました。銀座線換気口(写真4)と三越前駅B5出口(写真2)が見えます。銀座線は写真の右から左へ向かって走っており、私が立っている日本橋の下は通っていません。

余談ですが、左奥に見える大栄ビルは昔レンガ造りの美しい建物でした。改築されて味気ないビルになってしまいました。

 

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写真6 日本橋北詰

日本橋川の南側から北側を撮影しました。右に見えるのが日本橋で、正面奥に三越新館が見えます。銀座線は向こうから右手前に向かって走っています。日本橋の基礎と干渉しないように銀座線は建設されています。

 

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写真7 日本橋南詰

日本橋川の北側から南側を撮影しました。銀座線は写真中央を手前から奥に向かって半径150m左曲線で走っています。

 

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写真8 日本橋南詰

日本橋の南詰(観光案内所の裏)のいわくありげな空間です。この空間左寄りの地下には銀座線のトンネルがあります。

 

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写真9 日本橋観光案内所

写真8の中央通り側になりますが、この下を銀座線が右から左に走っています。

 

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写真10 ニホンバシビル

右手前に観光案内所のクリーム色の建物が見えます。正面に見える黒っぽい建物はニホンバシビルです。参考資料3コマ番号52「第19圖 淺草新橋間線路平面及従斷面圖」(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1235045/52)によると、このビルの基礎は銀座線トンネルとは干渉していないようです。この先、銀座線は中央通りの地下を走っています。

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そもそもなぜ銀座線が日本橋を迂回しているかですが、参考資料3のコマ番号54(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1235045/54)には「銀座線トンネルは日本橋川の橋梁を避けるように外方を通過させた。その前後において民有地の建築物直下に入らないようにするため、このような急曲線とした。」という内容の記述がありました。

参考資料
 1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道半蔵門線建設史(渋谷~水天宮前)」帝都高速度交通営団(平成11年)
 2.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)
 3.東京地下鉄道編「東京地下鉄道史 坤」(昭和9年) 国立国会図書館デジタルコレクション
 4.ブログ「ぼくの近代建築コレクション」