趣味人が電車の運転操作をできる機会はなかなかありません。さらに「制御装置の動作を見ながら」操作できるとなるとかなり限られてきます。そもそも現在一般的なVVVFインバータ制御装置の場合はその主たる部位が半導体スイッチング素子で、動作状態など見えるわけがありません。昔のチョッパ制御装置でも同じ話です。したがって動作が「見える」制御装置となるとさらに昔の抵抗制御用のものになります。そういう意味で鉄道博物館に展示されている「国鉄101系電車の制御装置と駆動装置」はとても貴重なのです。


電車(写真1)の前には制御装置のうち主制御器(写真2)が設置され、その脇にある主幹制御器とブレーキ弁操作により主制御器と共に、台車に取付けられた主電動機と輪軸も動作します。動かせる展示は人気があり、休日はもちろん、平日も昼間は子供たちに占有されています。ただし、脇で見ているとほぼ全員、主幹制御器ノッチをいきなり4ノッチまで回し切り、そのあとノッチオフして今度はブレーキ弁を一気に直通ブレーキ帯の最大まで回しています。この展示は現車とは異なり主回路電圧が低いと共に負荷はほぼない状態ですから、主制御器はガタガタガタと弱め界磁最終段まで一気に進段し、ブレーキ時は一気にギューと輪軸が回転停止してしまいます。その操作を見ながら「主制御器の動作をもっと楽しめるのになぁ…」と思っていたものですが、まあそれは無理な注文というものでしょう。
ある日の夕方…私は計画通り鉄道博物館の101系電車前にいました。昼間は操作する人が絶えないこの場所も、平日の閉館間近となると誰もいません。作戦開始です。本日の任務は「刻みノッチの動作確認」。
まず主幹制御器1ノッチ投入です。主抵抗器用カム接触器を動作させるカム軸は回転しません。もともと主抵抗器全挿入となるように回路が構成されていますので、1ノッチでは接触器が投入されるだけです。全抵抗挿入状態の直列1段位置で主電動機に通電が開始され、じわーっと回転し始めます。このあたりは現車と同じです。
次に主幹制御器2ノッチに投入しますが、2ノッチに入れたままだと限流継電器の支配を受けて直列最終段まで自動進段します。ただしこの展示品の場合は上記のごとく主回路電圧がかなり低く負荷もほぼないために主回路電流は限流値を大きく下回っており、実質的に限流継電器の支配を受けることはありません。どんどん進段して最終段に至ってしまいます。現車とは異なりガタガタガタと連続動作になってしまう理由です。
いったんノッチオフ後ブレーキをかけて停止させ、今度は刻みノッチです。まず1ノッチでじわっと起動。次に2ノッチに一瞬だけ入れ、すぐ1ノッチに戻します。するとカム軸は直列2段の位置にガタッと進段します。2ノッチに入れたままだと前記の通りガタガタガタとなってしまうので注意が必要です。もう一度2ノッチ投入してすぐ1ノッチへの戻し。ガタッと直列3段の位置に進段します。主抵抗器がひとつずつ短絡されていく様子がよくわかります。このように一瞬だけの2ノッチ投入を繰返し、直列最終段つまり直列13段までの進段を音で確認できました。現車においては雨天時のように空転しやすい条件で加速度をわざと低下させる場合に用いる技です。
次に主幹制御器を3ノッチに投入して2ノッチにすぐ戻したのですが…並列最終段である並列11段の位置までガタガタガタとカム軸が回転してしまいました。さらに4ノッチに投入して3ノッチにすぐ戻しても勝手に弱め界磁最終段までガタガタとカム軸が回転してしまいます。このあたりは現車とは異なり、制御回路をいじってあるようです。そもそも現車は主電動機4個直列×2群を直並列しているのに対してこの展示品は2個だけでかなり異なります。当然と言えば当然ですね。
ついでにブレーキ操作ですが、ブレーキ弁の不感帯が意外と大きく、ゆるめから直通ブレーキ帯にじわーっと回してもブレーキシリンダ圧力はじわーっと上昇せず、あるところまで回すとぴょんとブレーキシリンダ圧力が上昇します。逆に直通ブレーキ帯からゆるめ方向に戻す場合は比較的微小圧力まで残すことができ、ブレーキシリンダ戻しばねとほぼ釣り合う程度(制輪子が車輪踏面に触れてはいるがブレーキ力をほとんど発生していない)にできるということを確認しました。
所詮は展示品ですから現車と同じであることを期待してはいけませんが、部分的に刻みノッチを体験できました。
以上
さかてつでした…