世間一般における認識としては、「線路の上を走っている車両」=「電車」なんだろうなと思います。したがって、「これは気動車だ」とか「機関車だけが走っていったのだ」という表現は、「は?」ということになるのでしょう。今回は電車用の制御車を気動車用の制御車に改造した事例ですから、ますます「は????」かもしれません。
昔、小田急が東急になった頃…これこそ「は???????」かもしれませんが…、鉄道省木造客車の台枠を利用して3両の電車用制御車が製造されました。これらの車両は、いわゆる大東急時代にはクハ1650形と名乗り、戦後小田急が分離独立したのちには車体新製で増備されました。車番よりわかるようにこの頃はデハ1600形と編成を組んでいたのですが、1958年になるとクハとデハは仲良く更新され始めました。この際、クハ1651~1653すなわち鉄道省木造客車の台枠を利用した3両は東急車輛製造で車体を新製して交換しました。
その後、クハ1650形は1969年から廃車になりましたが、クハ1651~1653と1655の4両は、関東鉄道に引取られ、気動車用制御車キクハ1形になりました。制御車ということは動力源がないわけですから、電車用であっても気動車用であっても似たようなもの…と思ったら大間違いで、人間に例えると神経や臓器はかなり交換・改造が必要となりました。その一方で容姿はかなり昔のままですから、「転換手術」したことなど、そうと知らないとわからないものなのかもしれません。
ところで、1958年に車体を新製して交換したクハ1651~1653の「残り」すなわち旧車体はそのまま廃棄になったかというとそうではなく、そのうちの2両分は再利用され、今度は自力で走れる「電車」になりました。写真3に示した上田交通モハ5370形がその姿です。
念のため記しておきますが、クハ1651~1653の3両は戸籍上鉄道省木造客車からの歴史を持っていますが、キクハ1形になったのは1958年新製の車体です。
以上
さかてつでした…