1.はじめに
東京メトロ南北線の菊坂下換気室に関して、以前「謎」であるという記事を書きました。その後、貴重なコメントをいただき、それに基づき再調査した結果、かなり謎が解けました。
2.前回の記事
まずは前回…2020年3月20日の記事です。内容を要約すると、「菊坂下換気室の構造と位置は南北線建設史に記載されているが、その換気室の真上に換気口や換気塔は見当たらなかった」というものです。
3. Iビル
さて、菊坂下交差点の東側に建物④があります。そして、その東にIビルがあります。もちろん正式名称はありますが、ここではIビルということにしておきます。写真2の緑↑印がIビルです。
写真3は、菊坂下交差点を北から見たところです。写真中央付近に見えるのが建物④です。そして、建物④の左側にちらりと見えるのがIビルです。
4. Iビルの送水口
Iビルの前を歩くと、送水口が見えます(写真4)。ビルに送水口があるのは当たり前ですが…この送水口(写真5)にはなんと「営団地下鉄」という札が取付けられています。営団地下鉄という文字の前には懐かしいSマークが…。
Iビル用の送水口は1～2m離れたところにあります(写真6)。写真4および写真5の送水口は、営団地下鉄…現在の東京メトロの施設に接続されているわけです。
5. Iビルに関して
拡大した空中写真(写真2)からわかる通り、このIビルの平面形はごくおおざっぱに◇形です。さらに不動産サイトで間取り図を確認すると、エレベータ、給湯室、トイレ、階段、換気塔が◇の南隅に集まっていて、西と北と東はL字を伏せたような事務所フロアになっています。え？…換気塔？ はい、3m×6m程度の断面を有する換気塔があるのです。地下に1階床ありますが、その程度でこんな大断面の換気塔は設けません。それでは何の換気塔なのか…。
ネットでこのIビルに関して調べてみたら、某投資法人の資産運用会社であるI投資顧問会社が、この物件を取得した旨公開されていました。その公開内容から今回の記事に関係ありそうな項目を記します。
(1)建築時期：1992年4月
(2)土地面積：902.89m2
(3)土地の一部(223.32m2)に東京地下鉄を区分地上権者として、地下鉄道構築物敷設を目的とする区分地上権を設定
(4)南側隣地と上述区分地上権が設定された土地を対象として、東京地下鉄株式会社との間で、相互に無償使用できる契約あり
(5)ビル、換気室および換気塔の建替え、変更、模様替えをする場合は、東京地下鉄との協議が必要
6.合築の意味、菊坂下換気室の位置、排気道部の位置
さて、もうおわかりかと思います。私は前回(2020年3月20日の記事)において「新築ビルに合築された排気道部」は菊坂下換気室の「真上」にあるものと思い込んでいたのですが、実は「横」にあったのです。つまり、下記のような状況というわけです。
(a)Iビルが建っている土地の南側には「地下鉄道構築物」(排気道部)がある
(b)排気道部は土地の約4分の1を占める
(c)排気道部はIビルの換気塔に接続されていると推定
(d)Googleマップ写真を参照すると換気塔の開口部はIビル中央付近
(e)建設史略図記載の菊坂下換気室の位置はずれており、正しくは10mほど南西側にあると考えられる
(f)菊坂下換気室の真上に建物④があるが、換気口、換気塔は接続されていない模様
写真2を再掲載し、南北線建設中の菊坂下交差点付近の空中写真(写真7)を掲載します。
写真7の青↑印のあたりで菊坂下換気室と「地下鉄道構造物」(排気道部)が接続されているのでしょう。緑↑印の指している部位はいずれも換気塔のあるところです。Iビルの1階にはコンビニエンスストアが入っていますので、その出入口を避ける形で送水口(写真4～6)は赤↑印のところに設けられています。
7.まとめ
菊坂下交差点には菊坂下換気室があります。「隣接の新築ビルに合築された排気道部」は横に伸び、Iビルの換気塔につながっているものと考えられます。換気塔上部の開口部はIビルの中央付近です。なお、菊坂下換気室の真上には建物④がありますが、換気口、換気塔はありません。
tantalchan_さん、コメントどうもありがとうございました。
【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。
以上
ちかてつの
さかてつでした…
