1.はじめに
旧中川、荒川、中川を鉄橋で渡ってきた都営地下鉄新宿線の電車は、船堀駅を出ると再び地下にもぐり込み、次の一之江駅までほとんど一直線に走ります。地上のマス目状道路は無視して斜めに突っ切っています。
それではどのようなところを走っているのか…というのが今回の記事です。
2.本当に一直線なのか?
そもそも、新宿線は本当に一直線に走っているのでしょうか?
調べようにも、新宿線に建設史はありません。国土地理院の地図は近年正確さが増しているようですが、今ひとつ信用し切れません。そこでYouTube東京都交通局公式チャンネルで確認してみました。参考にしたのは下記の動画です。
東行線:【地下鉄】都営新宿線 前面展望(4倍速Ver.)Toei Shinjuku Line frontview(https://www.youtube.com/watch?v=m3K-H32dL5U)
西行線:【地下鉄】都営新宿線急行 前面展望①(本八幡~大島)(https://www.youtube.com/watch?v=HBPTwqr93hE)
このままだと速すぎるので、再生速度を0.25倍にしてトンネル内をじっくり見ました。
船堀駅の東で地下にもぐると、東行線と西行線はゆるく左に曲がりながらその間隔を開けます。途中から単線シールドトンネル並列になり、そのあとは文字通り一直線に突き進んで一之江駅に至っています。どうやら一直線に走っているのは本当のようです。
3.空中写真
写真1は1984年10月の状況です。船堀駅-篠崎駅間が開業するのは1986年9月ですから、まだ工事中の頃です。換気塔西側の開削工事状態がわかります。換気塔の周辺は大きく掘り返された跡があり、地下にはシールドマシンを発進した竪坑があるものと推定されます。
一方、一之江境川の東側はシールドトンネル区間になるため、トンネルの位置は全くわかりません。
写真2は2009年4月の状況です。建物①の壁面が斜めになっていることと換気塔があることが、トンネルの位置を特定する証拠になります。
その他、下記(1)~(3)もトンネル位置特定に役立ちました。
(1)東大島駅-篠崎駅間は基本的に単線シールドトンネル並列
「今だから話せる都営地下鉄の秘密」に記載あり
(2)外径7.3mシールドトンネル14.6m間隔(新中川堤防の河川占用許可標識より)
(3)シールドトンネルは一之江駅まで一直線(上記動画より)
上記の条件をすべて満たすように東行線と西行線のトンネル経路を検討し、その結果を写真2に記入してあります。
4.現地の状況
写真3は、新宿線のトンネルです。高架の船堀駅を出発するとどんどん下り、坑口でトンネルに入ります。さらに進むと、写真3の左方でトンネルの天井も地上から見えなくなります。
写真2においてトンネルを示す黄緑色の線の開始地点が、写真3の場所です。
写真4は、写真3の場所を西側から見たところです。写真3の奥に水色の跨線橋が写っていますが、その上から撮影しました。
新宿線は緩やかに左に曲がりながら地中にもぐっていきます。その先に建物①が見えます。この建物①は新宿線トンネルのすぐ脇にあります。
写真5は、写真4の一部を拡大したものです。建物①の右側(南側)壁面は新宿線トンネルの向きに合わせて斜めになっています。
これに対し、建物②は背の高い部分が東行線の上、背の低い部分が西行線の上です。そのため、南側の壁面は斜めになっていません。
写真6は、新大橋通です。新宿線は、写真右手前から奥に向かって斜めに突っ切っています。奥に公園が見えますが、その奥に換気塔が見えます。
写真7~9は、公園の隣にある換気塔です。なかなか立派です。周囲を取り囲む金網には、東京都交通局の記載があります。ここから先は単線シールドトンネル並列になります。
写真10は換気塔の東側から新宿線シールドトンネルが進む方向を見たところです。もともとこのあたりは背の高い建物がほとんど無いため、シールドトンネルだとその位置がわかりません。
「知っていればわかるが、知らなければ何なのか全くわからない」という世界です。
5.まとめ
都営地下鉄新宿線の電車は船堀駅を出ると再び地下にもぐります。次の一之江駅まで、地上のマス目状の道路を無視して斜めに突っ切っています。新大橋通沿いに換気塔があり、新宿線トンネルの存在を示しています。
以上
ちかてつの
さかてつでした…
【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。