【地下鉄好きの方へ】都営新宿線は道路下から顔を出すまでどこを走るか

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1.はじめに

 都営地下鉄新宿線の電車は、隅田川を渡ると新大橋通の真下を東に進みます。さらにこの先、旧中川、荒川、中川と鉄橋で渡るため、大島駅を出発後少し走ると地上に顔を出します。もちろん、新大橋通に顔を出すわけにはいかないので、道路の真下から外れてから地上に出ます。

 それでは、新宿線は新大橋通の真下から脇に顔を出すまでの間どこを走っているのか…というのが今回の内容です。

2.新宿線経路特定のむずかしさ

 都内を走る地下鉄のうち、東京メトロに関しては路線ごとの建設史がウェブ公開されいます。それに対して、都営地下鉄浅草線大江戸線しか建設史がありません。三田線新宿線の建設史は無いのです。

 また、今回の区間大島駅の東から坑口まで約500mと短いのですが、その経路特定は意外と大変でした。なぜならば、ここは大島車庫への入出庫線が分岐する所だからです。単純な複線トンネルではなく、東行線(本八幡方面に向かう本線)、西行線(新宿方面に向かう本線)、入出庫線が絡み合ったトンネルなのです。

 しかし、入出庫線が写っている空中写真が見つかったこと、YouTube都営交通公式チャンネルに入出庫線の動画があったことなどにより、経路が判明しました。

3.新宿線の経路特定手順 

 今回は大島駅の東から坑口まで約500mに関してですが、下記のような手順と内容でその経路を特定しました。

3.1 空中写真および地図による検討

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写真1 空中写真(1979年11月撮影)

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写真2 空中写真(2009年4月撮影)

 新宿線岩本町駅-東大島駅間が開業したのは1978年(昭和53年)12月です。したがって、写真1は開業1年後の姿ということになります。ちなみに写真1東側の範囲には、まだ埋め戻し工事が完了していない入出庫線が写っています。この入出庫線に関しては、次回以降記事にいたします。

 さて、新宿線経路特定に際して最初に実施したのは写真1と写真2の確認です。さらにGoogleマップ航空写真、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」も参考にして、写っている建物の形状や階床数より新宿線の経路を推定しました。

3.2 現地調査

 やはりいちばん大切なのは現地調査です。写真等の資料を参照しているだけではなかなかわかりません。現地で建物①~⑪などの状況を観察することにより、その下に新宿線のトンネルがあるか否か、検討しました。

3.3 YouTube東京都交通局公式チャンネルによる確認

 空中写真(航空写真)、地図、現地確認などにより、トンネルが存在するであろう範囲はかなり絞り込めましたが、入出庫線の位置特定にかなり悩みました。幸いYouTube東京都交通局公式チャンネルに下記の動画が掲載されていることがわかったため、これらの動画を何度も見ながら、曲線区間と直線区間それぞれの通過時間(≒長さ)、曲線の半径、東行線と西行線の接近・離隔状況などを確認していきました。

東行線:【地下鉄】都営新宿線 前面展望(4倍速Ver.)Toei Shinjuku Line frontview(https://www.youtube.com/watch?v=m3K-H32dL5U)
西行線:【地下鉄】都営新宿線急行 前面展望①(本八幡~大島)(https://www.youtube.com/watch?v=HBPTwqr93hE)
入出庫線:【地下鉄】都営新宿線 前面展望①(大島車両検修場~大島)(https://www.youtube.com/watch?v=2I6glpRavLM)

 ある程度経路を推定できたところで、東行線、西行線、入出庫線それぞれを写真2に描き込みました。その後、現地調査結果、Googleマップ航空写真確認結果、YouTube動画からわかる事実等々を突き合わせ、矛盾が無くなるまで描いては修正、描いては修正…と何度も何度も繰り返しました。

 ようやくたどり着いた答が写真2記載の経路です。ここに至るまで、休日の朝から夕方まで丸一日かかってしまいました。

4.現地状況

 以下、現地の状況と共に、新宿線トンネルの経路特定結果を説明します。

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写真3 大島駅

 写真3は大島駅プラットホーム東端です。左に見えるのは本八幡行(東行)の電車、その隣の線路は入出庫線です。この写真には写っていませんが、さらに右側(南側)に西行線があります。

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写真4 新大橋通

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写真5 新大橋通

 写真4および写真5は、新大橋通の北側から西側(大島駅方面)を見たところです。

 大島駅を出発した東行線は建物①の前付近で進路を少し南側に変え、建物⑥あたりで新大橋通の下から完全に外れます。逆に、建物⑩の下を走る西行線は、建物③の下を斜めに突っ切り、建物①付近で新大橋通の下に完全に入り込みます。

 東行線と西行線がこれだけ離れているのは、その間に入出庫線が入るからです(写真2)。

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写真6 新大橋通

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写真7 新大橋通

 写真6および写真7は、新大橋通の北側から東側(東大島駅方面)を見たところです。

 写真7において建物②が建物③よりずいぶん引っ込んでいますが、西行線トンネルがあるためです。建物②の新大橋通側にこげ茶色の階段がありますが、建物⑦(写真2)の形状から推定すると、建物②階段下は西行線トンネルということになります。

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写真8 入出庫線交差部

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写真9 入出庫線交差部

 写真8および写真9は、入出庫線が西行線と交差するあたりです。建物⑧⑩はその一部が、建物⑥⑨⑪はそのすべてが新宿線トンネルの上と推定されます。

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写真10 入出庫線交差部

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写真11 坑口遠景

 東行線と西行線は建物⑪の下を走っています。西行線の下をくぐった入出庫線は、建物⑪の下から道路の下に出ます。

 写真11付近になると、左(北)から東行線(本八幡方面に向かう本線)、西行線(新宿方面に向かう本線)、入出庫線と線路が3本並んでいます。奥に見える赤↓印は坑口です。ここから先、東行線と西行線は高架線になります。

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写真12 坑口近く

 写真12は、坑口近くの風景です。右(北)に見えるのは東行線と西行線で、地下から出て高架線になっていく様子がわかります。目の前の道路の下には入出庫線が並行していますが、このあたりで分岐して複線になります。つまり全部で4本の線路が並んでいることになります。

5.まとめ

 都営地下鉄新宿線の電車は、隅田川を渡ると新大橋通の真下を東に進みます。大島駅を出発して少し走ると道路の真下から外れてから地上に出ます。今回この経路を、空中写真、Googleマップ航空写真、現地調査、YouTube都営交通公式チャンネルなどより特定しました。

 入出庫線とその先の大島車庫に関しては、次回以降掲載します。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…

【注記】本ブログ中の空中写真は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データを私が編集・加工したものです。