【地下鉄好きの方へ】シールド工法とは?

1.はじめに

 地下鉄の経路に関する記事を連載しています。その中で当たり前のように「シールド工法」「シールドトンネル」と記載していますが、それがどんなものが簡単に説明いたします。

2.シールド工法とは

 鋼鉄でできた茶筒を想像してください。茶筒の先端には歯がついた円盤状の鋼板があります。この円盤をぐるぐる回しながら茶筒を土の中に押し込んでいくと、管状のトンネルができます。

 茶筒が通り過ぎたあとそのままにしておくとトンネルは崩れてしまいますから、茶筒の後ろを円弧状の枠(セグメント)で支えていきます。

 以上が、シールド工法の原理で、この工法で建設されたものをシールドトンネルと称します。

3.地下鉄博物館の展示

 文章だけだとわかりにくいと思います。また、実物を見ようにもそう簡単にいくものではありません。この点、博物館というのは本当にありがたい存在です。

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写真1 シールドマシン模型

 写真1は「茶筒(シールド)」と「歯がついた円盤状の鋼板(カッターディスク)」です。これがモグラのように地中にトンネルを掘っていくわけです。茶筒内部、すなわちカッターディスク後方には隔壁があります。カッターディスクと隔壁の間に掘った土が溜まりますので、パイプもしくはコンベアでトンネル外に搬送、排出されます。

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写真2 カッターディスク

 写真2は、東京メトロ副都心線(13号線)で実際に使用されたシールドマシンの「歯がついた円盤状の鋼板(カッターディスク)」です。細長い隙間から、掘った土が隔壁との間に入ります。このカッターディスクの回転速度は0.75回転/分です。

 

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写真3 単線シールドトンネル模型

 写真3は、鉄筋コンクリート製セグメントを用いた単線シールドトンネルの例(実物大模型)です。このようなものが地中に構築されているわけです。

 

4.小田急世田谷代田駅の例

 シールドマシンの実物を見ることができるのは関係者に限られます。しかし、用済み後のシールドマシン、すなわち「茶筒」を間近で見られる駅がありました。小田急世田谷代田駅です。過去形になっているのは、このホームには複々線化工事期間しか入れなかったからです。もちろん現在も「茶筒」は存在しているのですが、複々線化が完成して仮ホームが無くなってしまった現在、暗闇の中を通過する急行電車からこのような写真を撮影することはもはや不可能です。

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写真4 シールドマシン模型

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写真5 シールドマシン模型

 写真4および写真5は、世田谷代田駅に展示されているシールドマシン模型です。セグメントを取り付けて完成したトンネルをジャッキで押してシールドマシンを前進させるのですが、写真5を参照するとこのことがよくわかります。

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写真6 用済み後のシールド

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写真7 用済み後のシールド

 複々線化工事が完了する前、世田谷代田駅の急行線に仮ホームがありました。そして下り線の新宿寄りに「茶筒」が埋め込まれているのをじっくり観察できました。

 写真6の手前側は開削工法(地上から穴を掘削)で建設された部位です。奥の方から掘削してきたシールドマシンがここでトンネルを貫通させました。トンネルが貫通してしまえばシールドマシンは不要になりますので、カッターディスクはもちろんのこと、「臓物」一式を撤去し、「茶筒」だけをトンネルの一部にしてしまいます。写真手前に見える白っぽい部位が「茶筒」です。

 土木技術に興味がある者にとっては実に興味深い光景でした。

5.まとめ

 シールド工法に関してごく簡単に説明しました。鋼鉄でできた「茶筒(シールド)」の先端に「歯がついた円盤状の鋼板(カッターディスク)」を取付け、セグメントをジャッキで押してその反力で土中に進んでいきます。セグメントが入る分だけ前進したら、シールド内でセグメントを組立てて管状のトンネルにします。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…