1.はじめに
東京メトロ東西線は都心から東に向かって基本的に永代通の下を走っています。永代通は永代橋で隅田川を渡ります。しかし東西線は永代橋の下は走らず、その脇を走っています。ちなみにほとんどの地図は「東西線は永代橋の下を走っている」という表記になっています。
2.橋の真下に地下鉄を建設するのは結構大変
道路の真下に地下鉄トンネルを建設する場合、いちばん簡単なのは開削工法で地上から穴を掘ることです。では、橋の真下に地下鉄トンネルを建設する場合も同様にするのが簡単かというと、そうではありません。
橋という建造物の真下にトンネルを建設する場合、橋の基礎を下受するか、橋の基礎よりもさらに深いところにトンネルを掘るか、という話になります。いずれにしても厄介で、橋の脇にトンネルを建設できるならその方が簡単ということになります。
東西線は、隅田川を渡るところでケーソン工法を採用しました。両岸の陸上部も含めて9基の潜函(ケーソン)を永代橋の下流側に沈め、全長259mのトンネルとしています。隅田川の東岸には換気塔があります。
潜函を沈設するところには関東大震災前で崩壊した旧永代橋の残骸があって工事の妨げになった旨、東西線建設史に記録があります。その一方で、旧永代橋があったからこそ隅田川両岸の接続部も民有地にかからず東西線を建設できたわけですね。
3.永代橋付近の現地状況
東西線は茅場町駅(写真1左上)からまっすぐ永代通の下を走ってきます。永代通は隅田川西側で少し屈曲して永代橋を渡りますが、東西線は隅田川にまっすぐ向かい、その後半径450m左曲線になっています。
隅田川右岸の護岸付近からは、半径250m右曲線で旧永代橋接続道路経由で永代通の下にもぐり込んでいます。
隅田川西側交差点(写真2)の信号機には「永代橋西」という標識が取付けられていますが、地上には「永代橋」という標識があります。地図によると「永代橋西」の方が正しいようです。
東西線は、この交差点で屈曲することなく、手前から奥に向かって突き進んでいます。
永代橋の脇には小さな公園があります(写真3)。ここは旧永代橋の西側になります。東西線はこの真下を奥から手前に向かって走っています。
隅田川西岸の護岸(写真4)に「地下鉄構築物河底通過標識」があるかと期待して探してみたのですが、残念ながらここには取付けられていませんでした。
隅田川の東岸から西岸を望んでみました(写真5)。右に見えるのは永代橋で、東西線は奥から私の足元へ向かって走っているはずです。しかし、それを思わせるものは何も見えません。
隅田川の西岸から東岸を望んでみました(写真6)。私の足元から奥に向かって東西線が走っています。実は東岸には「地下鉄構築物河底通過標識」があります。黄色↓印がその場所を示します。
隅田川東岸の地下鉄構築物河底通過標識を拡大したものが写真7です。
中心より上流幅員 5.90m
中心より下流幅員 5.90m
構築物中心半径 250.00m
等々記載されています。この真下を東西線が走っていることの証です。
護岸から上がると、換気塔があります(写真8)。眺めていると、地下から電車の走行音が響いてきました。
写真8を撮影した地点で体を90度左に回すと、永代通が見えます(写真9)。旧永代橋に接続する道路があるので、東西線は民有地に食い込むことなく永代通に半径250m右曲線でもぐり込んでいきます。
4.まとめ
東京メトロ東西線は都心から東に向かって基本的に永代通の下を走っています。永代通は永代橋で隅田川を渡りますが、東西線は永代橋の下は走らず、その脇を走っています。旧永代橋があったため、隅田川両岸の接続部も民有地にかからず東西線を建設できています。
多くの地図には東西線が永代橋の真下を走っているように記載されていますが、これは正しくありません。
以上
ちかてつの
さかてつでした…
【注記】
写真1は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データ(CKT20176-C13-26)を私が編集・加工したものです。