1.はじめに
「東京メトロ東西線のトンネルはどこにあるか」を連載しています。
東西線は、パレスサイドビル前の内堀通地下に建設された竹橋駅に滑り込みます。この駅にも毎度おなじみの換気口がありますが、今回は窒息してしまった物件に関するお話です。
2.皇居付近の経路
写真1は東西線建設着工直前の空中写真です。写真2は近年の空中写真に東西線経路を示したものです。写真2においてパレスサイドビルの南側に竹橋駅があります。竹橋駅はほとんどがケーソン工法(黄色の点線)区間となっています。なお、写真2中のR203.3という表記は曲線半径を、87~91の数字は換気口のNo.を示しています。
3.竹橋駅換気口の状況
大手濠越しに見ると、「四角い建物に茶筒を組み合わせ」というパレスサイドビル(毎日新聞社)の基本構造がよくわかります(写真3)。東西線の竹橋駅は写真3左側の「茶筒」前から右手前方向にまっすぐ伸びています。もちろん手前の方は完全に大手濠の中です。
平川橋の西側にはNo.90換気口(写真4)があります。右奥にはパレスサイドビルが見えます。東西線竹橋駅は写真右奥から左手前に伸びています。No.90換気口から内堀通り沿いに東へ30m程度のところにはNo.91換気口(写真5)があります。平川橋の東西にほぼ対称的にふたつの換気口が配置されているわけです。ちなみにこれらの換気口にNo.90等の表示はありませんでした。
ところで下記サイトのフリーワード検索で「竹橋 潜函工事」と入力検索すると、No.91換気口付近の建設状況写真が出てきます。写真5と同一方向に平川橋が見えることがお分かりいただけると思います。
メトロ文化財団サイト「メトロアーカイブアルバム」https://metroarchive.jp/
東西線建設史には竹橋駅のプラットホーム上にふたつの換気口が記載されています。その位置はまさにNo.90換気口(写真4)とNo.91換気口(写真5)の存在地点と一致しています。となると、竹橋駅のプラットホーム側にもNo.90換気口とNo.91換気口があるはずです。
No.90換気口の真下に相当する場所は2番線(中野方面)ホームの8号車と7号車の境目あたりですが、プラットホーム壁面を見ても換気口はありません。その代わり、扉付きの小部屋のようなもの(写真6)がありました。上部を見るとどうも配線ダクトとして使用されているようです。
No.91換気口の真下に関しても同様で、1番線(西船橋方面)ホームの5号車と4号車の境目付近の壁面には小部屋があるだけで、換気口はありません。
現地の状況が腑に落ちないので、再度地上でNo.90換気口とNo.91換気口の状況を確認しました。私はしばらく換気口の上に立っていたのですが、そのうち重大なことに気づきました。風も音も全く出てこないのです。まさか…と思い換気口の中をよく見ると、なんと、穴になっていません。地表から20cm程度のところに「底」があります。さらに配線用接続箱と思われるものも設置されていました(写真8)。
どうやらNo.90換気口とNo.91換気口は配線用ダクトとして転用され、換気口としての機能は失って「窒息」してしまったようです。No.90換気口とNo.91換気口にNo.表示がなかったのは、このような理由があったからなのかもしれません。
これらふたつの換気口を廃止したことにより東西線トンネル内の換気が不十分にならないかという懸念がありますが、建設史に記載されている小公園のNo.92換気口とNo.93換気口は現在大きな換気塔になっており、No.90~93換気口の機能を統合したようです。
4.まとめ
竹橋駅のプラットホーム中ほどにはふたつの換気口がありますが、現在は換気機能を失っており、音も風も出てきません。
以上
ちかてつの
さかてつでした…
【注記】
写真1~2は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データ(MKT636-C7-19、CKT20176-C15-22)を私が編集・加工したものです。