東西線No.24換気口の謎

1.はじめに

 「東京メトロ東西線のトンネルはどこにあるか」を連載しています。東西線に限らず地下鉄には換気口がつきものです。しかし中には「存在しているはずなのにわからない」換気口もあります。
 今回は東西線No.24換気口の謎に迫ります。

2.神田川左岸(西側)の東西線経路

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写真1 工事中の空中写真(1965年8月)

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写真2 近年の空中写真(2017年8月)

 このあたりが開業したのは1966年(昭和41年)3月です。そのころの現地状況(写真1)と近年の状況(写真2)を示します。
 写真1を参照すると開削工法で建設したトンネル直上にはまだ建物がほとんどなく、東西線の経路がたいへんよくわかります。建設史には「小滝橋付近で山手製氷を買収した」旨記載されていますが、これは写真1中の「東西線↓」の↓印先端部付近です。現在ここには、東京メトロの施設があります(写真2)。

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写真3 民有地走行区間(写真2の拡大)

 このあたり、東西線は民有地の地下を斜めに突っ切っています。建設史、空中写真、現地状況を突き合わせて考察することにより浮かび上がってきた東西線トンネルの位置を、写真2と写真3に青い点線で示します。写真3の範囲において西側は東京メトロの施設の下を通り、神田川と交差してから住宅地に入り込みます。なお⑦~⑯は建物を、No.24とNo.25は換気口を示します。

3.「No.24換気口かもしれない」建物群

【民有地に食い込む東西線https://me38a.hatenablog.com/entry/2019/12/13/221230
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 以前の記事にNo.23換気口が登場していますが、この先明確に番号がわかる換気口は、早稲田通の歩道にあるNo.26換気口になります。つまり、No.24とNo.25という二つの換気口が間にあるはずです。これらのうち、No.25に相当する換気口は、実は住宅地内にあります(写真3)。はっきりしないのがNo.24換気口です。今まで現地を調べ、さらにGoogleマップ航空写真で確認した限りでは、No.24換気口は見つかっていません。しかし、東京メトロの施設敷地内には「No.24換気口の可能性がある建物」がいくつかあります。

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写真4 建物⑩

 建物⑦と建物⑧の間から東の方を望むと東京メトロの施設が見えます(写真4)。施設敷地内はもちろん立入禁止ですが、道路からいろいろな建物が見えます。
 建物⑩(写真4)は、東西線トンネルと並行するように建てられています(写真3)。構造的にはコンクリートブロック積みであり、入口が4か所あります。屋根上に換気装置が4つ取付けられています。建物⑩はおそらく倉庫で、内部は4つの部屋に仕切られているものと思われます。

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写真5 建物⑩および建物⑪

 建物⑩の北側に扉はなく、コンクリートブロックが積み上げられているだけです(写真5右手前)。壁面に換気口もありません。
 建物⑩の隣には建物⑪があります。陸屋根で高さが2段階になっており、北側壁面に窓や扉はありません(写真5)。南側には入口があるように見えます(写真4右)。なおGoogleマップ航空写真を見ても、屋根上に換気口はありません。建物⑪はおそらく東西線トンネルへの階段室ではないかと思われます。

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写真6 建物⑫とその周辺

 建物⑫は、建物⑩および建物⑪から少し離れたところに建っています(写真6および写真7)。建物の向きもこれらの建物と同様、東西線トンネルと平行になっています(写真3)。背は10m少々あるように思われます。西側壁面上部には小さな換気口があります(写真6右手前)。北側壁面はのっぺらぼうです(写真6および写真7)。Googleマップ航空写真を見ても、屋根上に換気口はありませんでした。

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写真7 建物⑫とその周辺

 建物⑫の東側は上部が突出していますが、突出部床面に換気口はありません。突出部天井近くにはごく小さな換気口があります(写真7左手前)。南側がどうなっているかわかりませんが、階段があることから、少なくとも入口はあるはずです。南側の壁面に大きな換気口がある可能性も否定できません。屋根上に関してですが、Googleマップ航空写真を見ても換気口はありません。
 写真6をよく見ると、建物⑫南側(写真6右側)の1階庇と思われるところに雨樋があります。ここにも入口があるようです。建物⑫はおそらく東西線トンネルへの機材搬入口ではないかと思われます。

4.ではどれがNo.24換気口に相当するのか

 もう一度各建物について考えてみましょう。

●建物⑩(倉庫?)
 いくら屋根上に換気装置が取付けられているといっても、トンネル換気口の上に倉庫を建ててしまったら本来の換気機能は大幅に低下します。建物⑩は、No.24換気口に相当しないと思います。

●建物⑪(階段室?)
 屋根高さが2段階になっているのは、階段が建物⑪内で直角に曲がっているからではないかと思われます。開口部の断面積としてはかなり小さく、トンネル換気口として機能させるには無理があると思います。建物⑪も、No.24換気口に相当しないと思います。

●建物⑫(機材搬入口?)
 建物⑫は地下からまっすぐ立ち上がったような感じで、開口部の断面積はかなり大きそうです。勝手な推理ですが、昼間はエレベータかごを退避させて換気塔として機能させ、夜間工事をする際は列車は通らないので換気塔をエレベータシャフトとして活用するのかもしれません。すなわち、各階床ごとの機能は次の通りではないか…と推測します。

 最上部(3階):資材運搬用エレベータ巻上機室
 中央部(2階):エレベータかご退避階
 最下部(1階):資材搬入口兼換気口

5.東西線建設史再確認

 ここまで現地調査と考察をした後、東西線建設史に何か記載されていないか改めて探してみました。すると、中野起点3km地点付近、まさに東京メトロ施設がある場所に関して、「東西線トンネルと一体の地下詰所」があること、軌道に保守材料を搬出入するための昇降用リフト(エレベータ)があること、が記されていました。さらに付属建物として「コンクリートブロック造の油庫」「鉄筋コンクリート造のリフト上家」を建設した、ということも記されています。これらの付属建物は本記事の建物⑩と建物⑫そのものですね…。

6.まとめ

 東京メトロ施設内にある建物についていろいろ考察した上で建設史を見直したところ、建物⑫は東西線トンネルに通じていることが明らかになりました。この建物⑫こそNo.24換気口に相当するのではなかろうかと思われます。ぜひとも建物⑫の中を見てみたいものです。

f:id:me38a:20191022195213j:plain以上
ちかてつ
さかてつでした…

【注記】
写真1~3は、国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」よりダウンロードした写真データ(KT657Y-C3-14、CKT20176-C21-18)を私が編集・加工したものです。