丸ノ内線と日枝神社の鳥居

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写真1 No.98換気口

 丸ノ内線がどこを走っているか確認するに際して、意外と悩んだのが日枝神社の下あたりです。最終的に外堀通に出ているのは間違いないのですが、どこを通っているのか難航しました。

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写真2 日枝神社エスカレーター(東側)

 総理大臣官邸のふもと(西側)、ザ・キャピトル東急ホテルの前(南側)にNo.98換気口(写真1)があります。この道路に沿って西に進むと、日枝神社へのエスカレーターの下に出ます(写真2)。エスカレーターをくぐってすぐに左に曲がると、そこは山王下交差点(写真3)です。日枝神社の立派な鳥居があります。

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写真3 山王下交差点の日枝神社鳥居

 一方、建設史にも日枝神社鳥居と丸ノ内線トンネルの位置関係を示す図が記載されています。当初、この図に掲載されているのが山王下交差点の鳥居(写真3)だと思っていました。図によると丸ノ内線は鳥居の足元を斜めに横切っています。したがって、丸ノ内線山王パークタワーの北側(写真3左奥側)を通ってから急曲線で右に曲がって鳥居の足元を通り、外堀通に出ていることになります。
 しかし、なんだか違う気がします。

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写真4 日枝神社エスカレーター(西側)

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写真5 No.99換気口
 どうもよくわからないので、日を改めて現地調査し直しました。その結果、日枝神社エスカレーターの下(写真4赤↓印)に換気口を発見しました。現地換気口にNo.の記載はありませんが、建設史には「100」と記されているので(番号が1ずれているのは判明していますので)、現地換気口(写真5)はNo.99であると判断しました。

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写真6 日枝神社ふもとの道

 No.99換気口(写真5)があるということは、丸ノ内線はこの真下あるいは直近を走っているということです。そこで日枝神社のふもとの道を左折せずにまっすぐ進むと(写真6)、なんと鳥居がありました(写真7)。やっとわかりました。建設史の図に記されている鳥居はこちら(写真7)だったのです。

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写真7 日枝神社鳥居

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写真8 外堀通に面した日枝神社鳥居

  外堀通から日枝神社鳥居を見ると、右隣に黒い建物があります(写真8)。いかにも軽そうです。丸ノ内線はこの建物の真下を通り、鳥居の下を斜めに突っ切って外堀通に半径160m右曲線で出てきます。ちなみにNo.98換気口(写真1)あたりで丸ノ内線はすでにA線とB線が上下2段積みになり、その状態で日枝神社のふもとを走って鳥居の下を突っ切り、外堀通の下にある赤坂見附駅に至っています。

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写真9 日枝神社周辺(1963年)

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写真10 日枝神社周辺(1984年)

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写真11 日枝神社周辺(2009年)

 まとめです。日枝神社周辺の航空写真(写真9~11)をご覧ください。

 青↓印:No.98換気口(写真1)
 赤↓印:No.99換気口(写真4および5)
 赤・印:山王下交差点(写真3)
 黄↓印:鳥居(写真7および8)

 No.98換気口のすぐ西からNo.99換気口までは直線、No.99換気口から鳥居(外堀通り)付近までは半径160m右曲線です。よく見ると、山王下交差点に鳥居があるのは写真11のみで、写真9と10にはありません。建設当時の鳥居は、やはり黄↓印だったのです。

 「建設史は建設当時のものであり、現状とは異なる場合が多い」ということをしっかり認識しないと、とんでもない思い違いをする…という事例でした。

【参考資料】
 1.帝都高速度交通営団編「東京地下鉄道丸ノ内線建設史(下巻)」帝都高速度交通営団(昭和35年)
  P.120先「図77 西銀座・新宿間線路平面図及び縦断面図」
  P.166「図113 日枝神社鳥居受工事位置図」
  P.166「図114 日枝神社鳥居受工事施工図」

  2.東京地下鉄編「東京メトロ建設と開業の歴史」実業之日本社(2014年)

【注記】
 国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」でダウンロード可能な空中写真は、出典の明示を行なえば利用可能(申請不要)であり、編集・加工等をした場合はその旨記載が必要です。写真9~11は国土地理院写真データ(MTK636-C9-19、CKT843-C12-30、CKT20092-C58-19)を基に私が編集・加工したものです。