銀座線はどこを走っているか(その2) 新橋付近

中央区と港区の境目に新橋という橋がありました。現在では新橋が架けられていた堀は埋め立てられ、その上を東京高速道路が走っています。銀座線は上野駅方面から中央通りの下を走ってきますが、この新橋付近でほぼ直角に右折して新橋駅に至っています。YAHOO!地図やGoogleマップを見ると、銀座線は中央通りの下をまっすぐ南下して新橋を通り過ぎて港区に入り、外堀通りとの交差点で右折して新橋駅に至るように記載されています。その際、交差点内側(北西側)の民有地に多少食い込みながら右曲線だけで新橋駅方面に曲がっていると考えるのが自然です。

ところが、参考資料1コマ番号52「第19圖 淺草新橋間線路平面及従斷面圖」(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1235045/52)を参照するとそうはなっていません。銀座八丁目において半径150m左曲線で中央通りの中央から東側に振れ、新橋の脇(東側)に入り込みます。そこから半径123m右曲線でほとんど民有地に食い込まないように外堀通りの下にもぐり込み、曲がり終わると新橋駅です。

参考資料1コマ番号203(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1235045/203)にはこのあたりの建設時の状況が記されています。建設当時の隅切りがかなり小さかったころでさえ、B線(浅草方面行き)しか民有地に掛かっていなかったのです。現在は隅切りが大きくなっていますので、銀座線はこのあたりで民有地の下を走っていないということになります。

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写真1 新橋北詰

新橋を北側(銀座八丁目側)から見た状態です。銀座線はすでに中央通りの中央からかなり左側(東側)に振れており、私の真下を手前から奥に向かって走っています。

 

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写真2 新橋(銀座八丁目側)

銀座線は奥(銀座八丁目側)から手前に向かって走ってきます。このあたりから半径123m右曲線になります。堀に水が流れていたころ、私が立っているところは橋の外側(水の中)だったはずです。銀座線トンネルは橋の基礎と干渉しないように建設されたものと推定されます。

 

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写真3 新橋(新橋一丁目側)

写真2と同じ地点から反対側(南側)を見た状態です。写真左側に新橋の親柱がありますが、これは移築保存されているもので、実際に橋があった頃はもっと右側(西側)にあったはずです。銀座線トンネルは半径123m右曲線で、私の足元から奥に向かって曲がっていきます。

 

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写真4 新橋南詰

写真3より少し南で撮影したものです。この先の交差点(信号機があるところ)の右奥へ向かって、銀座線は半径123m右曲線で曲がっていきます。交差点の角に面した建物の下は通っていません。

 

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写真5 新橋南詰

写真4と同じ地点から反対側(北側)を見た状態です。新橋の親柱が保存されている一角ですが、この小さな広場左側(西側)の地下には銀座線トンネルがあります。

 

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写真6 新橋南詰の換気口

写真5の少し南側には銀座線の換気口があり、電車が通る音が聞こえてきます。

 

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写真7 外堀通りと中央通りの交差点

この交差点の右側(東側)から左側(西側)に向かって、銀座線は曲がっています。正面につくだ煮の店がありますが、建設当時に比べて道路の隅切りが大きくなっているため、このつくだ煮の店の真下に銀座線トンネルはないはずです。銀座線は歩道の真下を走っていることになります。

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一見、単純な曲線で曲がるだけに思われる交差点であっても、橋の基礎を逃げる等の理由により特殊な曲がり方をしていることがある、という事例でした。

参考資料
 1.東京地下鉄道編「東京地下鉄道史 坤」(昭和9年) 国立国会図書館デジタルコレクション