モハ5114はクハ5215と同時に新造された車両です。デハ5012+5013と異なり、連接車ではありません。そのため「デハ」ではなく、従来通り「モハ」となっています。
(1)昭和41年(1966年):新造
(2)平成3年(1991年):廃車
車体は長さ18200mm(デハ5012、デハ5013より3100mm長い)で3扉になり、定員も115名(デハ5013までは100名)となっています。車体長だけに関して申せば、京急1000系、東急初代7000系(いずれも17500mm)より長く、阪神の青胴車、赤胴車(いずれもその多くが18180mmもしくは18280mmだった)とほぼ同等です。
顔はデハ5012とほとんど区別がつきませんが、こまごまと異なっています。使用実績を反映して設計変更したのでしょう。
(a)雨樋位置が低い。(車体断面形状も少し違うようです。)
(b)窓上の水切り端部が下がっている。
(c)窓下の凹部が広い。
(d)連結器上部の車体外板に切欠きあり。
こちら側の床下には、蓄電池箱、接地開閉器、主制御器、遮断器箱、電圧調整器、電動発電機、接地開閉器、主開閉器など、電気関係の機器が艤装されています。デハ5012に対して、遮断器箱は相応の大きさになったように感じます。
台車は日車NA-19(軸距2160mm)で、デハ5012+5013のNA-13(軸距2200mm)より少し小さくなっていますが、国鉄電車用台車(多くは2100mm)ほどは小さくありません。揺れ枕吊りを廃止して構造簡易化(軽量化)を図ったのはよいのですが、上揺れ枕の案内は摺り板を用いる方式に戻っています。また、スポーク車輪を用いているため軽快な印象ですが、相変わらず釣掛け式です。台車全体として中途半端な感じがします。
電動発電機の右(車体中央付近)に艤装されているものは、可溶器だろうと推定します。
この角度で見ると、なかなかスマートです。
デハ5012と同様、屋根上には国鉄153系に使用されていたような押込み形通風器が並んでいます。
こちら側の床下には、電動空気圧縮機、元空気溜、中継弁、M制御弁、制御空気溜などの空気関係機器と主抵抗器が艤装されています。
デハ5012+5013が試作車的存在であったのに対し、それを量産化したのが本車両という感じです。
参考資料
1.「日本民営鉄道車両形式図集(上編)」鉄道図書刊行会(昭和51年)
2.「日本民営鉄道車両形式図集(下編)」鉄道図書刊行会(昭和51年)
3.「日車の車輌史 写真・図面集-台車編」鉄道史資料保存会(2000年)
4.松原淳「福島交通」「鉄道ピクトリアル1987年3月臨時増刊号」P.152~155 鉄道図書刊行会(昭和62年)