モハ1209~1210共通の内容に関してはすでにモハ1209の記事に記した通りで、謎があるという点は変わりありません。今回はモハ1209との差異を中心にモハ1210について記します。
モハ1209と特に違いというほどのものはありません。
モハ1209と同様、床下には主として電気関係の機器が艤装されています。
写真4より連結器左右の台枠突出状態がよくわかります。ただし写真5を見ると、台枠突出部の裏側は旧側梁につながっているようには見えません。台枠をどのように流用・加工したのか、疑問を残したまま現車はこの世から消えてしまいました。
銘板は昭和26年(1951年)となっており、書類上の新造年度(昭和27年)とは食い違っています。これはモハ1209の記事に記載の通り、届出遅れと思われます。
床下艤装状態はモハ1209と同様です。
こちらも台枠が突出しています。
モハ1209と同様、主として空気関係の機器が艤装されています。
車体標記に関してですが、モハ1202~1203より自重が6t重くなっています。トンの表示にtではなく漢字を使っていますが、文字が異なっている点がおもしろいですね。
・モハ1209の標記
形式 モハ1200
自重 30屯
換算 積 3.5
空 3.0
・モハ1210の標記
形式 モハ1200
自重 30瓲
換算 積 3.5
空 3.0
掲載した拡大写真は芝浦(のちの東芝)PM-4A制御器です。電磁弁のオン・オフによりピストンを動かし、ラック・ピニオン機構でカム軸を回転させる構造ですが、油圧も用いているようです(電空油圧カム式)。資料4には、下記のような記述があります(引用)。
「芝浦製作所は1937年より芝浦がPCMをベースとしたPMを阪神国道70形へ…」
「油圧カムは今では阪堺電気軌道にPMがわずかに残るのみである。」
資料5~6を参照すると阪堺モ351形などが類似のPM-2A-2制御器を搭載していることがわかりますが、詳細は今後の課題です。
参考資料
1.川上幸義「福島交通(鉄道線)」「私鉄車両めぐり特輯(第Ⅲ輯)」P.10~17 鉄道図書刊行会(昭和57年)
2.瀬古龍雄「35年前の東北私鉄」「鉄道ピクトリアル1987年3月臨時増刊号」P.54~58 鉄道図書刊行会(昭和62年)
3.松原淳「福島交通」「鉄道ピクトリアル1987年3月臨時増刊号」P.152~155 鉄道図書刊行会(昭和62年)
4.白井昭(ブログ)「制御器史余話」(2007年7月)
5.「日本民営鉄道車両形式図集(下編)」鉄道図書刊行会(昭和51年)
6.斉藤秀樹「阪堺電気軌道」「鉄道ピクトリアル1985年12月臨時増刊号」P.198~202 鉄道図書刊行会(昭和60年)