EF63(その2) 横軽間無動力車両との連結

EF63で特徴的なのは軽井沢側(第2エンド)です。

 

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写真1 両用連結器

電車と連結するため、密着連結器が一体になっています。興味深いのは空気菅で、ブレーキ管(上部中央)だけとなっています。一般的な密着連結器にはブレーキ管の左右に直通管があり、鎖錠部の下には元空気溜管がありますが、この両用連結器にはありません。「あさま」として使用されていたクハ180の先頭側(EF63連結側)には自動連結器の他にブレーキ管しかなく、元空気溜管や直通管は設けられていません。ということは、電車と連結しても電磁直通空気ブレーキは使用できず、自動空気ブレーキだけ使用ということになります。

 

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写真2 ジャンパ連結器栓受(全体)

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写真3 ジャンパ連結器栓受(上半分拡大)

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写真4 ジャンパ連結器栓受(下半分拡大)

ジャンパ連結器に関しては、いろいろな車両と連結するためたいへんにぎやかです。どのような信号を引通しているのか、調べてみました。


■ 1.横軽区間無動力となる車両の引通し信号
まず、協調運転できない車両(横軽区間無動力となる車両)とEF63の間でどのような信号やり取りしているか調べてみました。例えば181系(クハ180)の場合は下記3本がKE64(19芯)で引通されています。

 (1)329線(ブザー回路押ボタン、電話回路)
 (2)330線(ブザー回路ブザー、電話回路)
 (3)411線(放送電源制御)

329線と330線はもともと電車編成内で乗務員どうしがブザー合図および電話を使用するための引通し線ですが、これをEF63に延長しています。軽井沢方向へ登る時もEF63横川側の運転台で運転しますので、電車の先頭車(軽井沢側)の乗務員との連絡のために329線と330線が使用されることになります。

411線は車内放送用出力増幅器電源の入り切り用で、EF63からも電車の車内放送電源を入り切りできることになります。ただし、もともと電車側にも乗務員がいるわけで、わざわざEF63から遠隔操作できるようにしてある理由はわかりません。


次に、写真2~4の各種ジャンパ連結器栓受と対応させながら記します。

◆ 1.1 上段右側の白丸とオレンジ色「165」KE63×2個
これらはEF63どうしの重連総括制御用です。165系を連結した場合はオレンジの栓受を使用して上記の329線、330線、411線を接続するのだろうと思います。ちなみに165系はKE64を2個(制御用と補助用)使用しています。329線、330線、411線は補助用のジャンパ連結器で引通していますので、こちらのみをEF63と接続することになります。

EF63のKE63が何芯であるかは資料不足のため不明ですが、両栓ケーブルで渡す(どちらの栓がEF63の栓受に入るかわからない)ということであれば、KE64と互換性のある19芯なのかもしれません。

◆ 1.2 下段右側の緑色「115」KE76(19芯)
115系はKE76を2個(制御用と補助用)使用しています。329線、330線、411線は165系などと同様、補助用のジャンパ連結器で引通していますので、こちらのみをEF63と接続です。

◆ 1.3 クリーム色「キハ57」KE66(2芯)とKE53(15芯)
これらはキハ57専用というわけではなく、従来形一般気動車に標準的に使用されているジャンパ連結器です。従来形一般気動車において左側上段のKE66は放送用として1個、中央下段KE53は2個(制御用、補助用)使用されています。ここからは推定になりますが、電車と同様の機能を有する信号を引通しているとすると、下記が該当しそうです。

 (1)407線(放送、電話回路)
 (2)408線(放送、電話回路)
 (3)100g線(接地線)

407線と408線はKE66、100g(100)線はKE53(制御用)によってそれぞれ引通されていますので、推定と矛盾はしないようです。

ところで、そもそも従来形一般気動車用ジャンパ連結器が使われたことはあったのでしょうか? 横川-軽井沢間が歯車式から粘着式に切替わったのが1963年10月1日で、それまでED42+キハ57だった急行列車はEF63+165系に置き換えられています。EF63+キハ57の連結運転は実施されたことがあったのでしょうか? ひょっとすると「一応、従来形一般気動車と連結できるようにしておいた」という程度なのかもしれません。

◆ 1.4 ピンク色「キハ82」KE62×2個
従来形気動車ではありますが、特急用ということでキハ57とは引通しの状況が異なります。まず、引通し線電圧は100Vです(キハ57は24V)。またキハ57等のKE53が15芯であるのに対しKE62は19芯となっているようです。キハ82に放送用ジャンパ連結器は見当たらないので、おそらく放送用引通し線もKE62に含まれているのでしょう。KE62を2個とも接続しているということは、例えば電話回路と接地線が別々のKE62に含まれているということなのではないかと推定します。

参考資料
 1.電車の機器とツナギ(昭和55年第18版)
 2.直流用新形電車教本(昭和59年第11版)
 3.最新絵ときディーゼル動車(昭和55年第9版)