江古田をどう読むかはあちこちで取上げられていますが、大ざっぱに「中野区:えごた 練馬区:えこだ」となっており、下記の経緯があるようです。
(1)現在の中野区に江戸時代以前から江古田(えごた)という地名があった。
(2)1922年に武蔵野鉄道(現在の西武池袋線)が武蔵高等学校用仮停留所を設置し、1923年に現在の位置に移転して本営業開始すると共に江古田(えこだ)駅と称した。
武蔵野鉄道がこう読むようにした理由はわかりませんが、他の鉄道においても「尾久:おぐ→おく」などという例がありますから、そう珍しい話ではないのでしょう。
さて、それでは中野区に昔からあった江古田という地名の由来は何なのか、中野区教育委員会がまとめた資料を参照するとこんなことが書かれています。
説1:このへんにエゴの木が生えていたから
説2:昔からの水田(古田:こだ)に江(川)が付されて地名になった
説1だと「えごた」、説2だと「えこだ」が本来の読み方ということになります。しかしどちらの説が正しいかはっきりしないそうで、中野区の「えごた」という読み方もそれが歴史的に正しいのかどうかわかりませんでした。
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次に現地の状況です。漢字だけでは読み方がわからないので、ふりがなやローマ字が併記されているものを探しました。
写真1 「えこだ」駅
西武池袋線の駅で、練馬区にあります。混乱はここから始まったわけですね。ちなみに周辺の江古田きたぐち商店会、江古田銀座、江古田いちば、江古田駅南口交差点、江古田通り…読み方はみんな「えこだ」でした。ただし「えこだ」駅から新「えごた」駅に向かって「えこだ」通りを歩いていると、中間地点を少し過ぎたところ(まだ練馬区)に「えごた」という食べ物屋さんがありました。すでに中野区的になり始めています。
写真2 新「えごた」駅前の「えこだ」通り 写真3 中野区の「えごた」通り
都営大江戸線の新江古田駅は区境にあり、西側が練馬区、東側が中野区です。読み方がどうなっているかというと新「えごた」駅で、中野区側の読み方になっています。すでに練馬区内に西武の「えこだ」駅があったので、新たにできたこの駅に関しては中野区側の主張が通って新「えごた」駅になったのでしょう。
やっかいなのは区境付近で江古田通りの読み方が変化することです。写真2は新「えごた」駅前の江古田通りですが、ここは区境の練馬区側の歩道なので「えこだ」通りと読みます。ところが目白通り(この下を大江戸線が走っている)を渡って完全に中野区に入ると、写真3のごとく「えごた」通りになります。駅名は統一されているのに通りの読み方は区ごとに異なっていて、わけがわかりません。
写真4 中野「えごた」病院 写真5 中野区立「えごた」の森公園
中野区に入ると「えごた」だらけになります。病院の名称、公園の名称、いずれもこの地名発祥の地にありますから「えごた」で問題ありません。
写真6 案内板その1 写真7 案内板その2
ところが、「えごた」の森公園近くで写真6のような中野区案内板を見つけてしまいました。町名や公園は「えごた」なのですが、川がなんと「えこだ」川になっています。むむ…と思いながら脇を見ると数m離れたところにもうひとつ中野区設置の案内板(写真7)がありました。さぁて、どうなっているかなと思いながら確認すると、こちらはちゃんと中野区読みの「えごた」川になっています。看板屋さんが間違えたと言ってしまえばそれまでですが、中野区も混乱しています。
写真8 「えこた」大橋
ついでですから、「第三の読み方」の例です。江古田公園脇の新青梅街道の橋ですが、「えこた」大橋となっています。「えこだ」でもなければ「えごた」でもありません、
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現地調査の結果分かったのは、基本的には冒頭に記載した通り「中野区:えごた 練馬区:えこだ」なのですが、必ずしも整理されておらず混乱しているということです。
なかなかやっかいな話ですが、だからこそ街歩きはおもしろいのです。