キワ90→キヤ90→ヤ390

1960年に2両製作された貨物気動車です。閑散線区の貨物輸送合理化が目的と言われています。しかし、輸送量が小さい線区で貨物(荷物)を扱うならキハニのような車両を使えばよいし、車扱い貨物だとしても1~2両なら旅客気動車に牽引させればよいだけの話です。貨物は人間と異なり自ら乗換えることはできませんので、小型の自走貨車を用意したところで合理化にはなりません。

…などとまじめなことを考えていたら、某雑誌で当時の国鉄担当N氏が「貨車にだって自走できるものがあっていいじゃないか、という程度の発想でちょっと試作してみました。」と述べていました。やっぱり、という感じです。昔はゆとりがあったんですね。

生まれが上記のような車両ですから運命はすでに決まっていたようなもので、1両が工事用気動車(装柱車)キヤ90に改造されました。装柱車とは、架線柱や梁に金具類を取付けたりトロリー線を張る際の「作業用架台」です。ヤ450などといっしょに房総方面の電化工事に活躍しました。のちに形式をキヤ90からヤ390に変更し、最高速度も45km/hに制限しています。

ちなみにもう1両のキワ90は改造されることもなく昇天しています。

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1枚目の写真は外観です。台枠より上は1/3程度残して車体が撤去され、昇降式作業台が設置されています。車体側面の「田田田」部は放熱器(車内設置)の空気取入口です。駆動軸側ではなく非駆動軸側の車体を残したのはこのためでしょう。

 

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2枚目の写真は1枚目と同じ側面です。興味深いのは電磁弁箱(配線あり)らしきものがあり、5、6、7、8という数字が見えることです。

当時の標準(キハ28など)
 4~5線:逆転機指令線
 6~7線:変速機指令線
 8~10線:ディーゼル機関燃料制御指令線

 

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3枚目の写真は運転台です。主幹制御器は当時の標準品MC19のように見えます。2枚目の写真の状況から「ジャンパ連結器は無いので総括制御こそできないが、少なくとも簡略方式(岩手開発鉄道キハ202のような空気管直接切替え)ではない」ということがわかります。さすが国鉄ですね。

 

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4枚目の写真は1枚目の反対側。5枚目の写真は4枚目と同じ側面の床下です。右端にK制御弁(貨車用)が見えます。当時の標準はA制御弁でしたが、この車両はブレーキ面でも「貨車」なんですね(キワ90時代からGKSブレーキ装置である旨諸元表に記載あり)。